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フレンチアルプスで起きたこと (2014年) 父、威厳を取り戻す

 アルプスの高級リゾートにバカンスにやって来たスウェーデン人一家を主人公に、父親のとっさの行動が引き金となって家族の絆に思いがけない亀裂が生じていくさまと、その顛末を、ユーモラスに描き出す。 (allcinemaより)

冒頭から穏やかじゃない空気が流れる。均衡を破るのは、2日目。テラスレストランで昼食をとる一家らに、大規模に成長した人口雪崩が襲いかかるのだ!
だれもケガ人はでなかったものの......ひとりで一目散に逃げ出した父親の行動が、のちに波乱を巻き起こしていく。

静かに進行するブラックコメディにきりきりする。夫婦の危機、家族の危機、疑似体験。
努めて冷静に、夫の人間性を責めざるをえない妻と、日を追うごといたたまれなくなって、ついには泣き出してしまう夫の姿に、得も言われぬ感慨がわいてくる。それは夫婦ならではであり、そうでないともいえる。
仲裁に入った知人カップルまで、雪崩からの余波を受けて互いの間に溝をつくってしまうのだから可笑しい。

真夜中、異変を感じて起き出してきた長女は、号泣する父をみて泣き出してしまう。三つ巴になって抱き合う家族だが、一緒になって泣けない妻の気持ちが、女だからか、よくわかる。
夫は無様で、妻はただしかった。世間によくある構図に落ち着くバカンス最終日。だけどそれは本当?そう疑わせるようなびっくりするラストが帰路には待ち構えている。妻の判断がいつだって冷静で正しいとは限らないことを突き付けられる結末なのだ。女のわたしは、やっぱりきりきりする。

人は、どんな困難な状況だって、排せつもすれば歯も磨く。日常の営みが逆にシュールさを増幅させる妙な味わいだった。
監督はスウェーデンの俊英、リューベン・オストルンド。
白銀のフレンチアルプスが美しい。

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(118min/スウェーデン=デンマーク=フランス=ノルウェー合作)
by haru-haru-73 | 2017-01-26 09:42 | 多国合作映画 | Comments(0)