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アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男 (2016年) 復讐ではない闘い

 1950年代後半、西ドイツのフランクフルト。経済復興が進み、戦争の記憶が風化しようとしていくなか、検事長のフリッツ・バウアー(ブルクハルト・クラウスナー)はナチス戦犯の告発に執念を燃やしていた。ある日彼の元に、アイヒマンがアルゼンチンに潜伏しているとの密告状が届き、部下のカール検事(ロナルト・ツェアフェルト)とともに、潜伏場所の特定に奔走するのだが、ふたりは激しい妨害や圧力にさらされていくのだった―。 (allcinemaより)

まさに孤高の闘い。男の哀愁。骨太な社会派作品でありながら、コンパクトにまとめられた秀逸なドラマだった。
戦後のドイツに、いかにナチスの残党が蔓延っていたか。アイヒマン逮捕がどれほど危険で困難だったか。バウアーによる影の依頼でイスラエルの諜報機関モサドが動いて拘束に至ったという経緯をはじめて知った。有名な裁判はこうして現実のものになったことを。

とにかく、バウアーとカールの人柄に惹きつけられる。ユダヤ人バウアーは、有能で実直な部下カールと共に、復讐ではなく正義のため脅しに屈せず動き続ける。
ふたりの間になにがあるのか。俄かに漂ってくる同性愛者たちの苦悩と誠実には、名作『キャバレー』へのオマージュをおもわせる、ジャズと仄かな退廃があって、すばらしくよく似合っていた。

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 (105min/監督 ラース・クラウメ)

by haru-haru-73 | 2017-01-26 10:49 | ドイツ映画 | Comments(0)