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『Running Pictures―伊藤計劃映画時評集〈1〉』 伊藤計劃

『Running Pictures―伊藤計劃映画時評集〈1〉』 伊藤計劃_d0346108_163143100.png 去年、お友達が教えてくれた作家・伊藤計劃氏による映画時評集。夭折したSF作家が、生前、デビュー前にウェブサイトで書き続けていた文章をまとめたもので、すごく面白かった。
ここで紹介されている50作品はほぼ観ことがある、有名作ばかり。劇場公開中のものを、劇場へ足を運んでもらうために当時紹介していたらしく、きちんと映画館ですべて観ている。志向からSF作品が多く、作家の愛した傾向がよくわかる。引き合いに出される映画タイトルや人物名だけでも、伊藤氏がいかに多くの映画を観ているかが窺えて、技術面にも詳しくて、くだらない作品のくだらなさを語る回さえ、映画ファンにはたまらなくおもしろかった。

好む映画のタイプが似てるとは言えないのに、作家が褒めた作品、貶した作品に関してほぼ100パーセント同感。映画の見方、ヘンテコでキッチュを好む嗜好、冒頭に掲示する「間口」の概念、なにもかもに賛同できる。こんなすごい人が、たった三冊の長編だけ遺して早世されたことをつくづく残念におもう。いま手元にある『屍者の帝国』から、すこしずつ伊藤計劃ワールドに触れていく計画。

本書を読んで見直したくなる映画は多数ある。たとえば私なら、『プライベート・ライアン』『シン・レッド・ライン』『ファイト・クラブ』『シュリ』を。同じように、誰が何といおうと好きだ!を共感できてうれしかったのは『アイズ ワイド シャット』『ワイルド・ワイルド・ウエスト』『御法度 GOHATTO』『人狼 JIN-ROH』。逆に『金融腐蝕列島 呪縛』『トゥルーマン・ショー』は未見だったけど、きっと観ようとおもえた。
その感性が、もう新しい映画に触れられないことが惜しい。著作をまだなにも知らないのに、近年の映画を見せてあげたい、『ブレードランナー』がリメイクされたことを教えてあげたい、そんなこと願うくらい魅力的なひとだった。
ちなみに。

 ジョニー「シザーハンズ」デップ
 クリスティーナ「バッファロー`66」リッチ
 ポール「ロボコップ」バーホーベン

この書き方....かなりツボ。

by haru-haru-73 | 2017-03-07 16:07 | | Comments(0)