『札幌の映画館〈蠍座〉全仕事』 田中次郎

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 札幌で最後の名画座だった『蠍座』が閉館して早2年。キッチュなアート作品や名画を掬い取ってくれる貴重な環境は失われ、物足りなさは募る一方。かつて『蠍座』が編んでいたようなプログラムは、もう札幌のどこの劇場にも存在せず、同時に、あの歯に衣着せぬ実直な作品解説を読むこともできなくなった。
本書は、そんな喪失の日々に真昼の光が差したような一冊。

『蠍座通信』を、すべてそのままの形で18年6カ月分まとめ、その間に上映された1550作品の索引と館主の書き下ろしエッセイを加えたもの。貴重な資料であり、思い出であり、最強の読み物として、これからもずっと事あるごとに開き続けていくとおもう。
いまはベッドサイドに置いて、頁の隅々まで読むのが夜ごとの楽しみ。

ちなみに、わたしが札幌に越してきてはじめて『蠍座』で映画を観たのは10年前。忘れもしない、ゾビエト映画回顧企画『惑星ソラリス』だった。蠍座通信を読み始めたのは、だから第125号からということになる。名画座をオープンさせるまでの経緯はこれまでにも語られてきたので知っていたけれど、開館当初からつねに経営が厳しかったことは知らなかった。良心的な入場料金で映画離れを食い止めようと頑張ってきた『蠍座』も、2014年12月、幕を閉じた。潔い最後だった。

 名画座を愛してくれた
 すべてのひとへ。
 その書棚へ。

 (帯より)

ほんとうに、そうおもう。極上の読み物。B5サイズ、950頁、中身と合わせて重量級。
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by haru-haru-73 | 2017-03-21 14:57 | | Comments(0)

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