人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『打ちのめされるようなすごい本』 米原万里

『打ちのめされるようなすごい本』 米原万里_d0346108_854467.jpg 著者が生前「週刊文春」に連載していた読書日記と、2005年まで10年間の全書評を収録した本。
『旅行者の朝食』から一転、寝食を忘れて本にかぶりつく姿があった。仕事上読まざるをえないのだとしても、その速読と知識の広さは底が知れない。『旅行者』の食いしん坊な万里さんと、本書の万里さんと、どちらがほんとうの姿なのだろう。わたしには前者におもえてしかたない。いや、そうであってほしい。寝食忘れて読みふけったというのは、依頼された書籍に対するひとつの褒め言葉だったのではないかしらと、少し。

書評は連載誌の繋がりで、必然、文春文庫がおおくなる。読みたい本がこれ以上増えることを恐れていたけれど、専門的過ぎてむずかしそうで食指の動かない本が多くホッ。メモした中からいま、丸谷才一『恋と女の日本文学』を読んでいます。もう一冊『転がる香港に苔は生えない』は家人の本棚に発見。

「ああ、私が10人いれば、すべての療法を試してみるのに」
ガンになられて、たくさんの関連本にあたる姿がほんとうに痛々しかった。賢いだけに解かってしまう苦い思いをいっぱいされたことでしょう。知らない不幸に勝る不幸もあるのかもしれない。答えはない。それでも凛としたまま本書は終わっている。
先日の伊藤計劃氏もそうだけど、膨大な知識と才能持ったひとの、いまの言葉を聞きたいと切に願ってしまう。米原万里さんなら、現在の世界動向をどう語ってくれるだろうかと。
書評集というのに、旧ソ連・ロシア現代史を一冊読んだくらいの知識を得ることができるーそう解説で井上ひさしさんに言わしめた本著は、打ちのめされはしないけど相当濃い内容を包含していた。



by haru-haru-73 | 2017-04-11 09:44 | | Comments(0)