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二重生活 (2015年)/『二重生活』小池真理子

 大学院生の珠は、ゼミで知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「何の目的もない、知らない人の尾行」の実行を思い立ち、近所に暮らす男性、石坂(長谷川博己)の後をつける。そこで石坂の不倫現場を目撃し、他人の秘密に魅了された珠は、対象者の観察を繰り返す。しかし尾行は徐々に、珠自身の実存と恋人との関係をも脅かしてゆく―  「BOOK」データベースより

 門脇麦ちゃんによる活躍ぶりは、偏に、濡れ場を演じてくれる貴重な存在価値にあるとおもわれる。ビジュアルの個性が相まって目下引っ張りだこ。“理由なき尾行”にのめり込んでいく陰気な大学院生役まで、じつによく似合っていた。
対象者の不倫を目撃してからというもの、珠は、同棲する彼氏(菅田将暉)が浮気している想念にとり憑かれていく。苦しみながらも尾行行為に魅了され、秘密を持たずには生きられない人間の性を受け入れその行為を続けていく。対象者との接触という、けして超えてはいけない一線を超えてしまうまでは.....

ソフィ・カルの『本当の話』を読む機会がいつか持てるといいなとおもう。とても面白そうで。
珠にしろ、石坂にしろ、彼氏にしろ、珠を尾行へと唆した篠原教授(リリー・フランキー)にしろ、バックグラウンドが描ききれていないことで原作とは大いに異なる。展開が映画用に変更されており、後から読んだ原作の奥深さに驚かされた。
篠原教授然り、どうしても年上の男性に惹かれてしまう、ファザコン・珠の屈折した恋愛観念は原作でしか味わえない。同時に、穏やかな彼氏と過ごすかけがえない日々に纏わる周辺も、映画では割愛されてしまっている。

他人の後をつけてみたい―
映画では思わなくても、読んだあとでなら俄かにそう思わせる蠱惑的な物語だった。自分を客観視するための行為が日常を脅かす。とても怖くて実際にできそうにはないけど。

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 (126min)
by haru-haru-73 | 2017-04-15 20:31 | 日本映画 | Comments(0)