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フォロー・ミー  (1972年) ロンドンを舞台にした珠玉の小品

フォロー・ミー  (1972年) ロンドンを舞台にした珠玉の小品_d0346108_1140159.jpg (あらすじ) アメリカ人の妻ベリンダの浮気が気になる会計士のチャールズは、私立探偵クリストフォローに尾行を依頼した。心寂しい妻は、ロンドンの街をぶらぶらと散策しているだけだったが、そのうち後をつけてくる私立探偵に、彼女は好意を抱きはじめるーー

 アメリカ人の妻とイギリス人の夫、性格の違う夫婦の危機に、野暮ったくも経験豊富な探偵が仲を取りもつ姿を描く。
タイプのまったく違う夫がなぜ、元ヒッピーの妻に惹かれたのか。ベリンダとじっくり行動を共にする探偵はしだいにわかってくる。
自然のなかで思索にふけり、公園を散歩し、ぶらりと映画館へと足を向ける。そんな、なんでもない時間を楽しみながら生きている彼女はとっても素敵なひとだということを。感受性豊かな探偵クリストフォローもすぐに魅了されてしまうほどに。

そんなベリンダもまた、あからさまに自分の後をつけて来る、白い洋服に白い鞄のいかにも怪しいバイク男の魅力に、気づいてしまうのだが....

二人はなんとなく互いに先導しあいながら、ロンドンの街を散歩して歩くのだった。映画を観たり、植物園に行ったり、イルカショーをみたり。言葉は交わさず、目配せとジャスチャーだけで、幾日も。

やがて、依頼人にすべてを話す時がきて、ベリンダと仲良くなった経緯を聞かされる夫チャールズは当然怒ってしまう。それと同時に、ベリンダにもクリストフォローの正体が、夫の依頼した私立探偵だということがバレるのだった。彼女にとってはダブルのショック。夫のしたことも、クリストフォローに抱いたささやかな恋心も。裏切られた気分で家を飛び出してしまう....

大真面目で博識で仕事人間の夫は、ベリンダや探偵クリストフォローとはまったく違うタイプ。
けれどベリンダは、絵やクラシックに触れる新たな悦びを教えてくれた紳士な彼を尊敬を持って愛したはずだった。趣味や性格や好みは違っても、お互いを尊重していたかつての二人は、いまも変わっていないのだ。

終盤、失恋気分で落ち込み気味のクリストフォローの、最後の最後の大活躍が見所。
自分がこの一週間したように、ベリンダの後を言葉を交わさずについて歩くように――と夫婦に提案する。
チャールズが再び、妻の生き方に肩を並べて歩くとき、出逢った頃の大切な感情が思い出されて、絆のさらに深まる素敵な幕切れ。


役者さんも、音楽もとにかく素晴らしい。
何より、もとは戯曲だったという脚本がとてもステキな作品。
妻を演じるミア・フォローの魅力があってこそ。そして探偵を演じたトポルの個性的な魅力。
ジーン・サックス監督の『サボテンの花』『裸足で散歩』が好きな方は、きっとこの映画も好き。


 監督  キャロル・リード
 製作  ハル・B・ウォリス
 原作・脚本  ピーター・シェイファー
 音楽  ジョン・バリー
 出演  ミア・ファロー  トポル  マイケル・ジェイストン  マーガレット・ローリングス
 (カラー/93分)

by haru-haru-73 | 2017-05-24 11:37 | イギリス映画 | Comments(0)