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最近観た邦画2+1

『月と雷』 (2016年)

 角田光代作品は『八日目の蝉』も『紙の月』も、ちっとも惹かれてこなかったのに、映画を観てすぐに原作を読みたくなった『月と雷』。
 彼らのように、親に連れられ、面倒みてくれる先を頼って、転々と暮らしを替えつつ大きくなった子どもは、どれくらいいるのだろう。そうそう多くはないはずで、寅さんはじめ成人男性ならまだしも、子連れの母親(草刈民代)がそんなんだと、智(高良健吾)や泰子(初音映莉子)のようにねじれが生じてしまうのは必至だ。

周囲から浮いていることに気づきつつ、それなりの大人になった智と泰子は、幼いころ半年だけ一緒に暮らした深い懐かしさに抗えぬまま、ヘンテコな関係に入っていく。
普通を夢見て普通の男と婚約していた泰子だが、再会してすぐに寝てしまった智との間に赤ちゃんを身篭り、もうどうしようもない血脈としかいいようない未来を覚悟する。

母親・直子さんを演じた草刈民代がすごくいい。捨て猫みたいにふらふらと、色んな男のところに住み着く直子さん、昼間から焼酎ばかり飲んでいる直子さんに、原作を凌ぐほどの説得力があった。
滑稽で、なんだかもの悲しくて、好きだった。
どうしたって生きていけるのに、なんで私たちは、片づけをして、三食栄養考えて食べて、働いて、規則正しく真っすぐしてるんだろう。他人の目を気にしながら、当たり前にあるべきように無意識に頑張ってる。それが普通だから。主人公たちのように壊れてねじれるのが怖いから。真似できないので余計に主人公たちをすごいとおもう。

映画よりは原作のほうがより深い、当然だけど。ただ、ちゃんと体当たりしている映画も立派だった。勝手な妄想では、泰子役が『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の石橋静河さんだったら...もっとすごい良作になっていたとおもう。

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『ナラタージュ』 (2017年)

 先に原作を読んで、いちミリも期待しないでみる。どこまでも、どこまでも良いところが見つけられずに、ただ長かった。行定勲監督とはとことん相性が悪い。

松本潤演じる葉山先生が先生に見えず、原作どおりの男らしくない姿にイラりとする。
有村架純ちゃんにだって坂口健太郎君にだって感情移入できず、切なさも、苦しみも、愛おしさも胸に迫らない。
教師と生徒ものという偏愛シチュエーションだってことすらプラス要因にはならない。

原作を読んだ時の妄想キャスティング、山田孝之氏が先生役だったら、ちょっとは違っていたのかな。名画の小道具も生きず、どこまでもつまらなかった。

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おまけ、『パパ活』
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 先日は、涸れ果てた、なんていってごめんなさい。いつか心酔していた野島伸司ワールド健在。『雨が降ると君は優しい』はちっともキュンとこなかったけれど、このdTVおもしろい。
むかし大好きだった渡部篤郎氏を、ずいぶんひさしぶりに魅力的に感じた稀有な作品。

大学教授と女子大学生がパパ活で出会い、はじまりの歪んだ関係から、次第にホンモノの愛へと変わっていく、歳の離れた恋愛+教師と生徒ものという、私的偏愛シチュエーションに見事かなっている。

次世代ガッキー枠らしい飯豊まりえちゃんが、ガッキーみたくかわいい。もっと病んで鬱々としてほしいけど、今どきの娘たちはこれくらあっけらかんとしているのが普通なのだな。
死んだ娘と同じ誕生日の女の子を相手にパパ活、仕事部屋マンションに囲う(住まわせる)という異常心理の教授を演じた渡部篤郎氏がなかなかにすてきだった。

by haru-haru-73 | 2018-05-15 19:09 | 日本映画 | Comments(0)