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『乱れからくり』 泡坂妻夫

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 これは!表紙に反しておもしろい。
幻影城ノベルス、昭52年出版。巻末プロフィールは中井英夫氏が担当している。
テンポよく進むうち、はてこれは三大奇書に似た衒学趣味ではないか、とおもう。けれども読みやすさで違う。

由緒ある玩具商ひまわり工芸。その製作部長を務める馬割朋浩は海外旅行への途上、降ってきた隕石に当たるという奇禍で命を落とす。新米探偵の勝敏夫は、上司である宇内舞子と共に馬割一族の邸宅『ねじ屋敷』を訪ねるが、そこはお化け屋敷さながら、巧妙な仕掛けをほどこした殺人屋敷であった。繰り返される殺人と推理。江戸時代の加賀にまで遡る馬割一族の謎がいま明らかにされる... (「BOOK」データベースより)

いつかの金沢旅で『大野からくり記念館』を前に入館しなかったことを激しく後悔する。この本を先に読んでいたら、勇んで来館していたのにな。金沢で行きたいリストに迷わずメモをする。
まず舞子×敏夫の探偵コンビに味がある。まだうら若き敏夫が犯人と疑わしき馬割朋浩の妻・真棹に惚れてしまう件などじつに微笑ましかった。
次々に親族が死につづけ、巨大な庭に潜むからくりに唖然茫然しながらも、いったいこの先どうなることかと面白さは止まらない。トリッキーな作風で知られる作者らしく、たしかに突き抜けてはいるものの、最後までしっかり気持ちよく騙されていた。

泡坂氏を調べていて驚いたのは、雑誌「幻影城」から出た作家に連城三紀彦氏がいるということ。たしかにミステリー作家ではあるけれど、今まで読んできた作品はどれも恋愛描写がじつに巧みで、純文学的であって、奇を衒うイメージはあまりないせい。
幻影城ノベルスはこれからも古書店で見つけたらきっと贖ってしまう。



by haru-haru-73 | 2020-07-04 20:15 | | Comments(0)