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かくも長き不在 (1960年) ナチスによる傷痕を描く心理ドラマの名編

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 (あらすじ) パリでうらぶれたカフェを営む女の所に、ある日突然現れた浮浪者(ジョルジュ・ウィルソン)。驚愕する女主人(アリダ・ヴァリ)。彼は戦場に行ったまま行方不明になっていた彼女の夫に瓜二つだったのだ。しかし浮浪者は過去の記憶を全て失っていた……。戦争によって人々が受けた深い心の傷を重厚な心理ドラマとして描いた傑作。

後の『シェルブールの雨傘』(1963)、イタリア映画の『ひまわり』(1970)に引き継がれる、大人の恋愛ドラマが素晴らしい。アリダ・ヴァリがソフィア・ローレンに見えてくる。それぞれ別の戦争だというのが意味深い。
浮浪者の後をつけて塒での挙動をハラハラと見つめるアリダ、男が雑誌を切り抜く手つき、切ないダンスシーン、皆に名前を呼ばれて思わず両手を挙げ逃げ出す男の悲哀。名シーンばかりだった。当時のモノクロの画面は否応なく魅惑的。
浮浪者がほんとうの夫だったのか、明かされないままの幕切れが絶妙な余韻を残す。戦場を描かなくとも、戦争が生み出しだ悲劇をこういった形で残してきた名画たちにただただひたすらに敬服する。

(監督 アンリ・コルピ/98min)

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by haru-haru-73 | 2020-12-29 20:00 | フランス映画 | Comments(0)